第2回 “老視とは” ~ピント合わせがピンチ

瞳みつめて 第2回「老視とは~ピント合わせがピンチ」

あなたが40歳以上なら、あなたの目はもう老視(老眼)になり始めています。「診察もしていないのに!」と怒られそうですが・・・。
物を見るためには、見ようとする像を角膜と水晶体で正確に屈折させ、網膜に焦点を合わせなければなりません。その主役を演じている水晶体は、厚くなったり薄くなったりすることで瞬時に屈折力を変化させ、はるかかなたの星の輝きから手のひらの携帯メールまで、遠近どこでもピントが合うように調節しています。
しかし、若いときはゼリーのようにプルプルと柔らかい水晶体も、年齢とおもに少しずつ硬くなり厚さの調整ができなくなってきます。この加齢による調節障害のことを老視といい、「手元の小さな字が読みにくくなる」「近くを見た後、遠くを見るとピンボケになる」などの症状が現れてきます。「眼鏡なんてかけなくたって新聞だって読めるさ」と不満顔のあなたはもともと近視ではないですか?近視のひとは老視になっても裸眼(眼鏡なし)で手元は見えます。でも、若い頃は眼鏡をしたまま近くの物がちゃんと見えていたはずです。40歳を超えたら、近視、遠視、乱視、どんな方でも皆さん老視になり始めます。「じゃあ、老視になったらどうすればいいの?」40~50歳以上になって、今まで見えてきた距離のものが見えにくくなったら、その距離に合わせた眼鏡をかけて衰えた調節力を補ってあげてください。眼鏡は長年ピント合わせの“ひとり舞台”を務めてきた水晶体をサポートする大事な脇役です。
ところで、40歳代の若い患者さんを前に「老視」なんてデリカシーのない病名、伝えにくいったらありません!なにか老視に代わるいい言葉はないでしょうか?労視、朗視、中視、壮視・・・四十にして惑わず、いっそ孔視では?

総合新川橋病院
副院長 眼科 薄井紀夫

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