第5回 “白内障③” 痛みなく短時間の手術(11月4日)

瞳みつめて 第5回「白内障③~痛みなく短時間の手術」

 わが国では、年間120万件もの白内障手術が行われています。長い年月の中で工夫、洗練されてきた手術の「質の高さ」はもちろん、全国どこの病院でも同じ手技が提供される「質の均一化」もわが国の眼科医療が世界に誇れる一面です。
 手術は麻酔薬を点眼して行います。目の周囲に麻酔薬の注射を追加することもありますが、いずれにせよ手術中に強い痛みを感じるとはありません。
 まず、水晶体嚢の一部を丸く切開し、そこから中の混濁(皮質と核)を超音波で乳化しながら吸引。最後に残した嚢の中に人工の眼内レンズを入れます。例えは悪いかもしれませんが、水晶体を「肉まん」になぞらえるなら、薄皮(嚢)に丸い穴を開けて、そこから生地(皮質)と具(核)だけを吸い取り、残した薄皮の中に眼内レンズを入れるイメージです。
 超音波の器械やレンズを挿入するために目の表面を切開する長さはほんの数ミリ、手術時間も10~30分程度、日帰りまたは数日の入院で行える手術です。挿入する眼内レンズの度数よって術前までの近視や遠視などを矯正することが可能で、またいったん眼内に挿入されたレンズは生涯にわたり安定した固定性と透明性を維持しますから、交換や再手術の必要もありません。
 手術を受けた患者さんの多くが、「短い時間で痛みもなく、こんなによく見えるなら、もっと早く手術を受ければよかった」とおっしゃいます。「家に帰ったら埃が気になって・・・」「鏡を見たらしわが気になって・・・」。予期せぬ再発見に苦笑いしている方もいます。
 「どこで手術を受ければいいの?」という質問には、いつもこう答えています。「どこで手術を受けても必ずうまくいきます。『遠くの親戚より近くの他人・・・遠くの新川橋より近くの他院』かもしれませんよ・・・」
 うちの院長も苦笑いかな?

総合新川橋病院
副院長 眼科 薄井紀夫

画像ファイルでもご覧いただけます。(神奈川新聞社著作物使用許諾済み)