斜視・弱視

斜視について

1.斜視(しゃし)とは?

両目でものを見ようとした時に、片目は正面を向き、もう片目が違う方向を向いてしまう状態を斜視といいます。

① 水平斜視:外側に向いたものを外斜視、内側に寄るものを内斜視
② 垂直斜視:どちらかが上か下にずれているものを上下斜視
③ 回転性斜視:横の線が斜めに見える回旋斜視

視線のずれる角度を斜視角と呼びます。

  • 斜視角10度以上:外見上で分かりやすくなり、手術の適応となります。
  • 斜視角5度以内:ほとんど気づかれなくなります。また治療後の目標となります。

2. 斜視の原因は?

 ・眼球を動かす筋肉・神経の異常、遠視や両眼視の異常、視力不良などが挙げられます。

3. 治療について

① 手術以外の方法
■ プリズム眼鏡
 ・眼鏡にプリズムを入れることで、見える映像の位置を意図的にずらすことができます。斜視自体が治るわけではありませんが、プリズム眼鏡を装着することで、斜視の角度を減らし、両方の目を使いやすくします。

■ 視機能訓練
 ・検査結果やご年齢を考慮し、必要に応じて適切な訓練を行っています。
 
② 手術
斜視用のプリズム眼鏡や訓練で治る場合は一部で、手術による治療をして、目の位置を正面に向きやすくするケースがほとんどです。
また、手術をしないからといって、失明をする病気ではありません。

4.手術の必要性

① 自覚症状として複視(ダブり)がある場合では、日常生活が大変不自由になります。プリズム眼鏡にて矯正不可能な場合は、片目を遮閉したり、手術治療が必要となります。

② 一般的な斜視においては、複視を感じない場合がほとんどです。その場合には、手術せずにいたとしても、失明する可能性はありませんので、整容上の治療目的が主となります。

5.手術の内容

眼球を動かしている筋肉(外眼筋)の位置をずらして、強く張るようにしたり、緩めたりして目の向きを正面に近づけます。
左右の視力や効き目、斜視角に応じて両眼行う場合と片眼のみ行う場合があります。
小児では全身麻酔で、成人または15歳以上になるにつれて局所麻酔で行うことが可能となります。
手術時間は、手術を行う筋肉の本数や長さによりさまざまですが、
局所麻酔で60~90分程度。全身麻酔の場合は麻酔時間の追加により+40~50分掛かります。

6. 斜視手術の合併症について

① 白目の内出血、局所麻酔による出血やアレルギー必ず起こることとして、白目の内出血です。最初は赤いですが、1週間程度でピンク、いずれ白く戻ります。まれですが、麻酔による合併症で球後出血を起こしたり、薬剤によるアレルギーを起こすこともあります。

② 手術後の約1ヶ月程度は縫合糸の残存により充血、異物感、目やになどがあります。
最初の1週間でまぶたの腫れや流涙が軽減し、その後は徐々に改善してくるのが一般的です。
白目表面の縫合糸は吸収糸を使用しており、手術をしてから約1.5ヶ月程度で自然に脱落・吸収します。感染の防止として点眼薬をして下さい。その期間は、プールや温泉などには入らないように注意してください。

③ 斜視の戻りについて
多く(約85%)の良好な手術経過としては、目の位置が正面となります。
手術後、約1ヶ月でまずは安定してきた状態となり、手術効果がある程度判断できます。
さらに時間経過が進むと、一定の頻度(約15%)で斜視が再発してくるようなことがあります。これは実際には再発ではなく、手術後1~2年以降してから徐々に「戻り」という現象で、立体感が弱かったり、年齢が若いほど起こりやすいといわれています。
筋肉縫合部の接着障害による術後合併症もありますが、特に原因がなくて「戻り」は起こります。そのため、外斜視では4年間、内斜視では6年間以上の経過をみることが推奨されています。
また、防止策として術後経過の途中で眼位維持のために視能訓練をすることがあります。

④ 再手術や複数回の手術をしている場合に、通常の手術よりも痛みが出やすいことが多く、手術効果も強すぎたり、不十分となることがあります。
頻度は少ないながら、上記以外にも様々な合併症は起こり得ます。手術中に合併症を生じた場合には、その時点で最善と思われる対応をいたします。また、手術後に合併症が認められた場合には、ご本人、ご家族に状態を説明した上で最良最善の対応をいたします。

皆さんが不安なく手術を受けられることが私達一同の願いです。もし疑問点などありましたら、どうぞご遠慮なく担当医にお尋ねください。

Q&A

Q.斜視だと何が困る?
A.目は両目で見ることで正常に物を見ることが出来る他、幼少期には正しく見ることで神経が刺激され視力等の能力が発達していきます。斜視の場合、ずれている目はほとんど物を見ることをしておらず、神経や筋肉に刺激を与えません。
刺激が無いまま成長すると、視力、物を立体的に見る能力等が正常に発達せず、いわゆる弱視という別の症状を引き起こします。

Q. 斜視は子供だけでなく大人もなるもの?
A. はい。大人もなります。
幼少期の軽い斜視が大人になってから悪化することもあります。ただし、必ずしも全員に手術が必要というわけはありません。

Q. スマートフォンの見過ぎで、斜視になるの?
A. はい。スマートフォンやゲーム機などのデジタル機器を長時間使用することが原因と考えられる急性内斜視が増えています。

弱視について

1.弱視(じゃくし)とは?

斜視や遠視等様々な原因により、視力の発達が妨げられてしまうことを言います。

2. 弱視の可能性がある症状

☑ 片目をつぶって見る
☑ 目を細くして見る
☑ 横目づかいで見る
☑ 顎を上げる又は下げて見る
☑ 頭を傾けて見る
☑ 上目づかいで見る

3.弱視の原因は?

斜視がある場合、ずれた目が使われず視力が発達しない事が原因で起こる弱視を、斜視弱視といいます。
他に遠視が原因で起こる遠視性弱視、先天白内障、眼瞼下垂等が原因の弱視もあります。

4. 治療について

子供の治療は早ければ早いほどよく、斜視弱視の場合小さいうちに「遮閉法」と呼ばれる片目を塞いで訓練する方法でほぼ回復します。ただ6歳頃になってしまうと効果を望めません。また、遠視性弱視はメガネ等で治療出来、眼瞼下垂等、他の症状が原因となっている場合、それを治療することで改善が望めます。

■ 視能訓練の内容

① 遮閉具(しゃへいぐ)を使用する治療(遮閉法)
視力の良い方を遮蔽具(=アイパッチ/目に貼る絆創膏のようなもの)で隠し、強制的に悪い方の目で見ることで、悪い方の目の視機能の発達を促していきます。また、点眼薬を用いて行う場合もあります。

② 眼鏡による治療
矯正用眼鏡を掛け、網膜の中心部にピントを合わせて鮮明な像を脳に送ることで視機能の発達を促していきます。 眼鏡にズレがあると効果が得られないため、正しい位置に眼鏡をかけられるようにしなくてはなりません。

■ 視能訓練とは
斜視のために両眼視機能に障害のある方や、屈折異常や斜視が原因の弱視の方に、視機能回復を目的として
行う矯正訓練指導です。
視能訓練は、医師の指導のもと「視能訓練士」の国家資格を持つ専門家が行います。
当院では、15名以上の視能訓練士が在籍しており、主に弱視、斜視、両眼視機能不全などに関して、個々の症例に合わせて常に細やかな対応を行います。特に小児が緊張することなく楽しみながら視能訓練や検査を行えるような環境や中長期に渡り経過を追えるよう配慮したシステム作りを心がけています。


Q&A

Q. 弱視は何が困る?
A. 物を正しく見る力が発達せず、視力が出ないことで、日常生活に影響が出ます。

Q. 弱視治療はいつ始めればいいのでしょうか?
A. 治療は低年齢であればあるほど、良い結果が期待できます。一般的に8歳程度で視力の発達は止まると考えられていますが、個人差も大きいので異変を感じたら眼科医にご相談ください。

最後に・・・専門医からのメッセージ (眼科 原崇彰医師より)


斜視と弱視の診療を視能訓練士と一緒に取り組んでいます。大人の方、高齢の方も斜視治療の対象です。
ご相談だけでもいいですから、是非当院にお越し下さいませ。
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