第3回 “白内障①” 還暦過ぎたら検査を(10月7日)

瞳みつめて 第3回「白内障①~還暦過ぎたら検査を」

あなたが60歳以上なら、あなたの目はもう白内障になり始めています。今回もまた「診察もしていないのに!」と怒られそうですが・・・。
 ピント合わせの主役を演じている水晶体、若いときはゼリーのように柔らかく透き通っていますが、40歳を過ぎた頃から徐々に硬さを増し、さらに60歳にかけて次第に黄色くあるいは白く色づいてきます。加齢による水晶体の硬化でピント調節がうまくできなくなった状態が老視(老眼)、透明性が低下し混濁してくるのが白内障です。
 例えば白髪やしわのように、寄る年波の変化は同年代でも千差万別ですから、白内障の進み具合も症状の現れ方も人それぞれです。視力低下や「かすみ」を自覚するだけでなく、混濁した水晶体がすりガラスのように光を散乱させるために、明るい屋外などで強いまぶしさを感じるようにもなります。「還暦を過ぎてから近視が進み眼鏡をいくつ替えても追いつかない」なども水晶体が色づきながら硬さと厚みを増す白内障の症状です。
 しかし、年をとってもこれらの症状をあまり感じない人も少なくありません。それは白内障の進行がとてもゆっくりなために、その穏やかな変化に気づかないからです。もし、ある時突然、20代の水晶体に戻ったとしたら、皆さんはあまりにクリアに見えることに腰を抜かすかもしれません。目だってそれほど年々確実に年をとっているのです。
 白内障、その昔は、と言われていました。白いりなんて、どこか哀愁が漂います。患者さんが書いてくださる問診票で、意外と多い誤字に「白内症」があります。なかには「白も」。みんなにはどうか秘密でね・・・。
 次回から3回にわたり、白内障手術についてお話しします。

総合新川橋病院
副院長 眼科 薄井紀夫

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