第9回 “黄斑” 網膜で最高感度の部位(2013年1月6日)

瞳みつめて 第9回「黄斑~網膜で最高感度の部位」

 いま皆さんがものを見つめたとき、その像は眼球の内側に張り付いている厚さ0.1~0.5ミリの網膜(カメラのフィルムにあたる神経の膜)の中心部に投影されます。その中心部は少し黄色みがかっていることから「黄斑」と呼ばれ網膜の中でも特に感度が際立ったとても大切な部位です。
 したがって、もし周辺部の網膜に異常があっても、黄斑さえ正常に機能していればあまり見えにくさを感じることはありません。逆に周辺部が正常でも、黄斑に問題があれば視力は極端に低下してしまいます。
 では、黄斑に起こる病気は?循環障害でむくみや出血を生じる黄斑変性症、セロハンのような膜がかぶさる黄斑上膜症、黄斑に穴があいてしまう黄斑円孔・・・、さらに網膜周辺部に生じた異常が黄斑に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
 1万人に1人の割合で起こる網膜剥離は、網膜にあいた穴から水が入り込み周辺部から黄斑にかけて網膜がはがれてくる病気です。糖尿病網膜症は、網膜の血管が脆くなってしまうためにむくみや出血を引き起こし、黄斑にも障害をもたらします。網膜の血管、特に静脈は動脈に比べ血行が緩やかで詰まりやすく、行き場を失った血液が出血を起こす網膜静脈閉塞症は、眼底出血(網膜出血)を起こす代表的疾患ですが、やはり黄斑を巻き込むこともまれではありません。
 まず、片方の目を隠してそれぞれの目の見え方をチェックしてみてください。どちらかの目だけゆがんで見えたり、中心が見にくく感じたら黄斑に異常があるかもしれません。異常を感じた場合は眼科を受診してください。
 すべての眼科医にとって最大の使命、それは皆さんの黄斑を守ることです。
 瞳をみつめ、黄斑を守り、「素晴らしい世界をもっともっと見てほしい」。それがわれわれの願いです。

総合新川橋病院
副院長 眼科 薄井紀夫

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