第4回 “白内障②” 年間120万件の手術実績(10月21日)

瞳みつめて 第4回「白内障②~年間120万件の手術実績」

 今回から3回にわたり、白内障手術についてお話しします。
 あなたが60歳以上であれば、あなたの水晶体は少なからず混濁し白内障の状態になっています。だからといってすぐに治療をする必要はありません。白内障は白髪と同じく年を重ねたことによる自然の変化であり、必ずしも病気とはいえません。しかし、見え方に支障を感じるようなら治療を考えます。白内障に対する唯一の治療、それは手術です。いったん混濁した水晶体は点眼薬などでは決して透明には戻せません。
 眼科医はたとえ視力が低下していても、患者さんが望まなければ積極的に手術を勧めません。すぐに手術しなくても失明など取り返しのつかないことにはならないからです。もちろん、本当は治療を受けたいのに、不安や怖さで躊躇されている患者さんの肩をそっと押すのも私たちの大切な役目なのですが、手術をするか否かはあくまでも患者さんの主体性に任されています。一方で、仮に視力が良くても、白内障のために少しでも見えにくさを感じる場合には手術を検討します。それは、視力がいい人にも行えるほど安全性が高く、しかも見え方の質を改善できる極めて優れた手術だからです。
 私が眼科医になって25年、白内障手術の進化は、めざましいものでした。手術機器や目に移植するレンズの品質向上はもちろん、医師に対する徹底した教育や啓発などで確立した安全性と統一性など、医療に限らず他の技術系分野にも誇れる発展を遂げてきました。そして現在わが国では年間120万件もの白内障手術が行われ、患者さんは診える喜びにほほ笑んでいます。ほんの短時間で終了する手術ですが、その短時間に集約された先人たちの汗や夢は高齢化社会を背景に今確実に実を結んでいます。
 次回は具体的な手術方法について述べます。きっと手術が怖くなりますよ。

総合新川橋病院
副院長 眼科 薄井紀夫

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